「ジョーカー・ゲーム」、その異質性

 2016年に放送されていたアニメ「ジョーカー・ゲーム」、こんなに面白いのにどうしてあまりヒットしなかったんだろう。

 最近履修したアニメで一番面白かったのに、知っている人が少なくてやるせないので、その異質性について考察してみる。

※この記事にはネタバレを含みます。見たくない方回れ右※

 

 

 

 

 

 

 柳広司による短編ミステリー小説を原作とするアニメで、舞台は世界大戦の火種がくすぶる昭和12年の日本。陸軍本部の反対を押しのけて、結城中佐によって秘密裏に設立されたスパイ養成学校、通称「D機関」。そこでさまざまな訓練を受け、最終的に残った8人の優秀なスパイたちが、やがて世界各国に散らばり任務を遂行していく物語。まあまず時代設定からしてきな臭い。この説明だけで十分見る人を限定しそうな堅さがある。

 

 

 アニメという映像作品においては、登場人物がそれぞれ個性を持ちキャラが立っていることが重要とされる。ところがこの「ジョーカー・ゲーム」、驚くことにキャラクターの見た目の区別がめっちゃつきにくい。名前も全員苗字だけ。福本と小田切、実井と波多野の見分けが私はなかなかつかなかった!!!似たような容姿になっているのは実は意図的で、「何者でもない存在」として極力存在感を消すことが必要とされるのがスパイという仕事だから、目立つ容姿ではいけないとか。そこまで考えられてるのが凄いけど、こういうところもつくづく視聴者に媚びないなあ…と感心してしまう。(でもキャストは引くほど豪華なのでそれに釣られて見た人多そう。)

 

 

 

 内容の話に移ります。8人のイケメンスパイのキービジュアルを見たチョロチョロ腐女子の私は、「あぁ~多分この8人が協力してさまざまなミッションをクリアしていくのねハイハイ」という安直極まりないイメージを抱いたのだが、蓋を開けてみたらなんとびっくり、8人が一堂に会するシーンが見られるのは1話と12話だけ。各話ごとに一人ずつD機関生が単身で任務を遂行していく一話完結型でした~!!!やられた!!!

 

 

 基本的には担当のD機関生の視点で物語が進んでいくんだけど、福本回(4話)、実井回(9話)、三好回(11話)のように、第三者の視点でストーリーが進行していく異色の回もある。その場合D機関生が登場する尺が非常に短い。三好に至っては……………

 

 み、三好~~~~~~~~(泣)(泣)(泣)

 

 ジョカゲ履修勢は三好の話すると条件反射で泣く。柩ショック*1。まさかあんな形で三好のお当番回を見ることになるなんて思わなかった!結城中佐の次くらいに主要なキャラクターだとばかり思っていたんだが!?

 

 

 まあこんな感じでとにかく視聴者に媚びないアニメだった。難解で先の読めない展開、血なまぐさいシーンこそ多くはないけれど、見分けのつきにくい似たような男たちが淡々と任務をこなしていく絵面は決して華のあるものではない。それでも惹かれてしまうのは、綿密に考えられ練られた物語の面白さ、そして、残酷なほど忠実に描かれたスパイという天涯孤独の存在に圧倒されるからだろうか。

 

 

 それからopがとってもおしゃれで好きです。自分を信じて自分を操れ!まさにこのアニメの世界観にぴったりだ。

youtu.be

*1:待ちに待った三好の担当回である11話「柩」で、どんな活躍が見られるのかと嬉々として待っていた視聴者をどん底に突き落とした鬱展開のこと。なんと三好は序盤で死体として登場した。三好はスパイ任務を遂行した帰路で、不慮の事故に巻き込まれ死亡してしまう。しかし、最期まで「何者でもない存在」として生き続けた三好は、スパイとして理想の終わりを遂げたともいえる。とは言えギリギリまで「きっとこの死体はダミーで後でけろっとした顔の三好が登場するはず!」「死んだふりしてるだけでこれ生きてるだろ」と生存ルートを期待した多くの視聴者を裏切る形になったので柩のことは許さない